平成19年3月25日、日曜日の午前。石川県の能登半島を、M6.9の地震が襲った。
福井の自宅でくつろいでいた支店長の村田も、かなりの揺れを感じた。「時間が経つうちにテレビで能登半島での被災の様子が明らかになり、これは大変だと」。前田工繊は、これまでその独自の技術で各地の震災復興に関わってきた。新潟県中越地震の時もそうだ。「すぐに電話で技術部長と話し合い、現地へ調査に向かうことにしました……」(村田)。
翌月曜日、朝一番で村田たちは能登半島へ赴いた。現地では、地元の重要な幹線である「能登有料道路」の盛土が崩壊し、無惨にも寸断されていた。何とかしなければならない……惨状を目の当たりにして、みなそう奮い立った。
営業の小林は、即行動を起こした。仮復旧のために、耐震性に優れた自社のジオテキスタイルを使った補強盛土工法を、石川県道路公社に提案したのだ。「新潟県の中越地震の復興工事でも、当社のジオテキスタイルを使った構造物はまったく被災を受けていませんでした。この実績をもとに、道路公社にアプローチしたのです」(小林)。
小林 喬 Takashi Kobayashi 北陸支店。石川県担当の若きエース。当プロジェクトのフロントに立ち、県、設計コンサル、施工業者、そして現場を束ねる。
村田 富彦 Tomihiko Murata 北陸支店 支店長。フロントにたつ営業・小林をサポートするべく、社内体制を統制。社内メンバーのモチベーション維持につとめる。
久保 哲也 Tetsuya Kubo 地盤防災推進部 課長代理。技術担当。各工区の仮復旧および本復旧において、ジオテキスタイルを用いる補強土工法に関する設計を行った。
道路は、人々の生活を支える社会基盤である。一刻も早い復旧が望まれる。しかし、余震などの恐れがある震災の場合には、盛土も従来以上に強化しなければならない。この両方を満たすのが、前田工繊が提案したジオテキスタイル補強盛土工法だった。まもなく開催された、有識者による能登有料道路復旧検討委員会で、この工法の採用が決定された。
しかし、村田や小林たちの前に、とてつもない難題が立ちふさがった。能登有料道路は、観光客を能登地方へ運ぶルートとして、いわば地元の経済を支えている動脈。地震の影響が軽微であることを世間に印象づけるためにも、どうしてもゴールデンウィーク前までに仮復旧させたい。県はそう強く望んだ。
小林は回想する。「残された時間はわずか1ヶ月でした。業界の常識でいえば、通常この規模の盛土工事は、3ヶ月はかかる。果たして本当にできるのか? 物凄いプレッシャーを感じました……」。前例のないプロジェクトが、はじまった。